春に笑って、君宿り。

*奈冷side*

「……ふう。こんなもんか」


日曜の朝。
いつもより少しだけ早く起きて、軽く掃除をした。

広い、広い家。

これから先輩達がここに来る。


「……」


タマキ先輩は家も近いので何度か家に来て色々話す機会があったけど
女子を家に呼ぶのは初めてで、少し緊張する。

別にやましいことするわけじゃないし、緊張する必要はないんだけども。

……あの人風に言うなら「合法的」という言葉が本当に妥当。


一度自分の部屋に戻り、必要になりそうな物をまとめる。
桜の香りが俺を包みこんで、緊張していた心が安らいだ。

花暖先輩からもらった匂い袋は、部屋につるさせてもらっている。
不思議とリラックスできて以前より寝付きもよくなった。


「……」


恥ずかしそうにしてたな。
匂い袋を俺だと思って、って。


「は~……なんだよ、それ……」


何度考えても胸がきゅうっとなって、ため息をつく。

なんで、花暖先輩ばかり俺を感じるんだよって。

俺にも、先輩を感じさせてよって。

……まあ、意気地なしの俺にはそんなこと言えるわけないんだけど。