「帰れ」
「どけ」
お昼休み。
教室の入り口でそんなやりとりがさっきからずっと繰り返されている。
教室に入って来たい信濃くんVS教室に入れようとしない環くん
「統河、貴様にカノはやらん」
「彼氏ヅラの次は父親ヅラかよ」
腕を組んで、難しい顔をしている環くんは、信濃くんの言うとおりさながらお父さんだ。
修学旅行が終わってもうすぐ2ヶ月が経とうとしている。
ちらほら衣替えをしている生徒もいる。
私もカーディガンくらい着てきたらよかったな。
「いいからカノ出せって」
「ならん」
そんなやりとりがずっと教室の入り口で続いている。
うう、気になるなあ。
「信濃くん、どうしたのかな」
「はなのに用があるみたいだね」
「すごい、漫画みたいにバチバチしてる……」
私たち女子3人は、安定の私の席に集まってお昼ご飯を広げていた。
でも、気になってお弁当どころじゃない。
修学旅行以来、信濃くんはこうして教室に来ることが多くなった。