春に笑って、君宿り。

バスが停まって、雪杜くんが先に乗り込んで、私に手を差し伸べてくれた。


「ほら」

「うん、ありがとう」


その手につかまって、私もバスに乗り込んだ。

いつもよりも遅い時間だったため幸い乗客はほとんどいなくて。
涙を流したばかりだったから少し安心した。

一番後ろの席に座って、バスがゆっくり動き出す。

この期に及んでゆっくり帰る方法を考えてるんだから
もう救いようがないほど君に溺れてる。


「……ねえ」

「?」

「先輩、さそり座ってことは、11月生まれ?」

「う、うん」

「……いつ」

「え?」

「だから、誕生日。……いつ?」


窓際に肘をついて、ずっと外のほうを見たままの雪杜くん。
髪の間から見える耳は少し赤くなってる。


「じゅっ、11!!」

「……へえ、いい日だね」

「雪杜くんは?」


雪杜くんの、誕生日。
絶対お祝いしたい。