春に笑って、君宿り。

「……匂い袋?」

「そう、かわいくてつい買ってきちゃった」


ふーん、とその匂い袋を見つめる雪杜くん。
もしかして、欲しかったりする?
この香り好きだったりする?


「あ、の」

「?」


リュックの一番小さいポケットから、もう一つ匂い袋を取り出す。
柄は同じ桜だけど、こっちは淡い水色。


「これ、実はもう一個あって、ね……」


よかったらどうぞ。
雪杜くんに身につけて欲しいな。
この香りを感じる度に思い出せるから。

言葉はこんなにたくさん浮かんでくるのに口に出せない。
さすがにやり過ぎだって警報が鳴る。

おそろいで満足できない自分が怖い。
どんどん欲張りになっていく。


この匂い袋がかわいくて自分用に買ったのは本当。
もう一つ追加して買ったのは……。


「こ、これ、色が雪杜くんみたいで、その」

「……」


その先の言葉を伝えるのが怖い。
引かれる。

自分と見立てた物を身につけられるって、やっぱり嫌だよね?
彼女でもないのに、ね。