春に笑って、君宿り。

「えへへ……よかった」

「……そういえば」


雪杜くんがなにかを確認するように私に近づいてくる。


「!?」


そして私の髪の毛を一束手にとって、くんくんと嗅ぎ始めた。
え、な、え!?


「……? 気のせいかな」

「!?!?!?」


今度は顔を近づけられて肩の辺りをくんくん。
くっ……くせぇですか!?

でも体は硬直して、声なんてもちろん出せない。


「さっき、花暖先輩を抱き留めたとき、桜の香りがした気がしたんだけど」

「よかった!!」

「よかった???」

「なんでもない!!」


とりあえずくさいわけじゃなかったみたいで安心!!

さくらの香り。
思い当たる節しかなくて、今度は私がにこにこしちゃう。

私は制服の内ポケットに手を入れて、「思い当たる節」を取り出した。


「たぶん、これじゃないかな?」


手のひらサイズの小さなピンク色の桜柄の巾着。