春に笑って、君宿り。

***
翌日。


「……」

「……げ、元気出して? カノちゃん……」


校門をくぐってすぐ、大好きなお友達と遭遇。

昨日私は、自分のバカさにひどく落ち込み、二人に電話で話を聞いてもらったのだ。

私がこんなにどんよりしているのはごく稀なので、いっそ動画でも撮ってみてほしい。
今の私はそんな言葉も口に出せないくらい落ち込んでいる。

ああ、なんということでしょう。
私の昨日の失態を聞いてくれますか?


「う……信濃くんに嫌われちゃう……」

「タオルくらいで嫌いにならないって」

「そうそう、昨日のカノちゃんの行動は全部、人の為だったんだから」


ごめんね昨日のおばあさん。
少しだけ、あなたの素敵なお顔が浮かんでしまった。

そう。
あと数十円足りなくて、タオルを買うことができなかった。

そしてせめて謝ろうと思って学校に戻ったら、サッカー部の練習は終わっていて信濃くんの姿もなかった。

いったいなんと謝ればいいのやら……。


「……あ、」


乃奈香ちゃんが、何かに気付いたような声を出す。
視線は、私を超えた後ろのほう。