春に笑って、君宿り。

リュックの中がぐちゃぐちゃだ。
あーあ、こんなところ雪杜くんに見られて、ガサツな女だと思われかねない。

違うんです。
もっと綺麗に整理整頓もできるし、本気出せば部屋だって1日でピカピカにできちゃうんです。


「……ぷ、」


光よりも早く振り返る。
だって噴き出すのが後ろから聞こえた。


「どれだけご近所さんに買ってきてるの。キリがないでしょ、はは……っ」

「う……っ」


見事に打ち抜かれる。
火力の高いその笑顔を必ず写真に収めて額縁に入れて飾りたいと何度も思う。

玄関でしょ、部屋でしょ。
あ、ポスターにして天井に貼るのもいいかも。

まあ、一番は写真じゃなくて、
私の隣でそうやって笑ってくれてるのが嬉しいんだけども。


「……あ、」


手に当たった紙袋の感触。
見つけた、これだ!!


「雪杜くん、あった、これ!!」


私はそれを取り出して、雪杜くんに差し出す。
ああ、さっきの笑顔が消えちゃった。
もちろんそういうきょとんとした顔も大好きだけどね?


「あ、ありがとう……」


小さな紙袋に包まれたそれをそっと受け取る雪杜くん。
私の手に触れないように、慎重に。

そんなさりげないところで雪杜くんの優しさを感じてきゅんとする。