春に笑って、君宿り。

「……おかえり、花暖先輩」

「……ぅはあああ~~~……」

「花吹雪飛ばさないでくれる?」


あああ、脳がとける。
耳が蒸発する。

雪杜くんの「おかえり」+名前呼び……!!

嬉しすぎて、何回だって呼んで欲しくなっちゃう。


「……何回だって呼ぶから、そんな催促しないで」

「え、私また声に出てた?」

「んん、顔に出てた」


「んん」ってその否定の仕方なにかわいいどうしてくれよう!?

え、え、雪杜くん、この修学旅行中で少し柔らかくなった!?
前は外は激すっぱパウダーのついた激固グミみたいな感じだったのに
この数日で一気にマシュマロ味が増したね!?

というか修学旅行中に雪杜くんから電話かけてくれたし、
あの電話で色々助けてもらったし。


……そこで、ふと信濃くんとのことを思い出す。


「……」


キス、されるかと思った。

もうだめだと思って目をぎゅっと閉じたとき、握りしめたままのスマホが震えて。
体が強ばってすぐに確認することができなかったけど、雪杜くんだったらいいなって思ってた。

とっさに信濃くんから顔を逸らして、スマホを確認しようとしたら
信濃くんに手をつかまれて。


真面目な顔して、「……出ないで」って言われて。