春に笑って、君宿り。

よかった。
やっぱりあんたは、笑ってる方がいいよ。


「ほら、もう消灯時間過ぎてるだろ。早く寝な?」

『え、どうして消灯時間知って……』

「っ、あんたがベラベラとスケジュールのこと話すから、頭に入っただけ!!」

『あは、そうなんだ、えへへ。うん、おやすみ雪杜くん。ありがとう』

「うん。……おやすみ」


プツッと、通話の切れる音。


「……やってくれんじゃん……」


仰向けになって呟く。

今日の授業で聞いた百人一首を思い出す。
色あせた桜に、自分の老いを重ねた小野小町の歌。

……色あせたりなんてさせない。

いつまでも咲いていて欲しいから。


何度も別れて、何度も裏切られて、何度も捨てられた桜の花。

最初に見つけられなかったけど
守ってあげることもできなかったけど。

これからは俺が信じてあげる。

ただ俺が美しいと思った、あの人の笑顔を。