春に笑って、君宿り。

何度も名前を呼ばれて、はっとする。
いつかもこんなことがあったから。

確かあれは、そう。遊園地に付き合わされた時だ。

お化け屋敷から逃げるようにして出てきた君が、何度も俺を呼んだ。

そして、友達というワードを出してきた。


……どうしてあの時、もっと余裕を持てなかったんだろう。
どうして、何があったのか優しく聞いてあげられなかったんだろう。


「……どうしたの」


翻弄されるな。
余裕をもて。

この人の、隣にいたいなら。


『……ぅ、ぐす……うっ』

「……」


ああもう。
つまらない意地なんて張らずに、さっさと電話してしまえばよかった。


『雪杜くん、』

「うん?」

『大好き』

「……うん」


とくんと音が鳴る。
いつだって真っ直ぐに伝えられる君が羨ましい。

俺にも、その強さが欲しい。