春に笑って、君宿り。

一瞬だった。
私は信濃くんの腕の中にすっぽり。

ぎゅうっと力強く、抱きしめられて。

こんなの初めてで、息が止まって。


雪杜くんの腕の中に飛び込んだことは今まで何度もあったけど、
全然、違う。

雪杜くんはただ私を支えるように、優しく添えるようにしてくれてた。

だから、こんな。
苦しくなるほど強く抱きしめられた事が、ないから。


知らない石けんの香り。
知らない体温。


「し、し、しなのくんっ!?」

「……覚えておいて」


耳元で囁かれる、知らない低い声。


「ユキメ後輩との関係、今すぐにでもぶっ壊して俺のものにしたい」

「え、え……っ!?」

「俺、カノが思ってるほどいい奴じゃないから」


体が離れる。


「クズにだってなんだって、なってやる」

「……っ」


瞳が、顔が、近づいてくる。

言葉と共に、吐息がかかった。