春に笑って、君宿り。


「かわいい、君はなにちゃんっていうの?」

「犬に話しかけてもわからないだろ」

「あは、わかるかもしれないよ?」


今日聞いた声のどれよりも少しだけ高くて幼さの残る声。

普段聞き慣れていないその声がとても新鮮で、初対面なのに何故か普通に会話していて、なんかもうおかしいや。


「はあ、無事で良かった」


男の子は子犬を抱き直して、近くに転がっていた黒いバッグの元へ移動する。
……私もついて行っちゃお。

バッグからタオルを取り出して、子犬の体を丁寧に拭き始める。

優しい手つきだなあ。

淡い青色に染まった髪の毛は所々濡れていて、そこから優しい目が見え隠れ。


「……あ」


私は、近くに転がっている自分の鞄からタオルを取り出す。

……うん。後でまた買えばいいよね。

買いたてのタオルを広げて、男の子の頭にかぶせた。


「うわっ!? ちょ、何するんだよ!?」

「君も濡れてるんだから、きちんと乾かさなくちゃ」

「はあ!? あんたにそこまでされる筋合いな……」


男の子の反論が途中で止まって、彼の視線をたどる。