「……あら、小銭がない……」
少し下の方からそんな声が聞こえて視線を落とす。
先ほど席を譲ったおばあさんが困った顔を浮かべてがま口を見つめていた。
「おばあさん、いくら必要?」
「え……っ」
突然上から降ってきた私の言葉に、おばあさんは少しだけ目を大きく開いた。
「ごめんね、私もあんまり手持ちがないから、100円までならあげられるんだけど……」
「そんな、席まで譲ってもらったのに」
「んーんいいの!! 困ってる時はお互い様だよー」
にこっと笑うと、おばあさんはすごく申し訳なさそうにしてうなずいた。
***
「ふーっ、お金足りてよかった~!!」
バスから降りて、ほっと胸をなで下ろす。
「人助けできたし、天気もいいし、最高~!!」
両手をぐーっと空に伸ばす。
気分も晴れ晴れ、人生楽しいね!!