聞こえてきたのは、怒りを纏った低い声。


今の今までザワザワしていたエントランスホールが一気に静まり返った。


振り向くと、目に映ったのは茶髪の男子生徒。


私の横を足早に通り過ぎて掲示板の前まで行くと、さっきの金髪男子の腕をしっかりと掴んだ。


「女の子ひとり突き飛ばしておいて、よくあんな心ない言葉を掛けられるな」


「は?いきなり何だよ、お前」


「ちゃんと謝れよ」


不機嫌になる金髪男子を鋭く睨む茶髪の男の子。


その威圧的な表情に萎縮したのか、周囲の冷たい視線に耐えられなくなったのか。


金髪男子は私の側にやって来た。


「ごめんなさい」


渋々といった感じの小声。


その一言だけ発した彼は、逃げるように教室棟の方へと走って行った。


この空気、気まずい。


私も早く教室に行こう。


素早く立ち上がると、茶髪の男の子が駆け寄って来た。