「えっ?嘘でしょ?」

 お母さんの言葉に、驚きの声を漏らしてしまった。

 「嘘じゃないわよ~。お母さんが冗談を言ったことある?」

 言われてみれば、お母さんが嘘を付いたことも、冗談を言ったこともないかも・・・。

 だからって唐突すぎる!お母さんとお父さんが海外旅行に行ってしまうなんて!

 「商店街のくじ引きで1等当てちゃったのよ」

 「私も連れてってよ!1人だけ置いて行くっておかしくない?」

 いくら高校生でも、気持ちはまだ中学生だよ!自称だけど・・・

 「ごめんねぇ。チケット2枚だけなのよ。できればお母さんも美琴(みこと)連れていきたいけど・・・そうするとお父さんを置いて行くことになるでしょ?でもお父さんは家事、なんにもできないじゃない。1か月間の間に死んじゃったら困るのよ。うちの大黒柱なんだから」

 確かにお父さんの家事のできなさは世界1だ。
 
 焼きそばのはずなのにソースがなかったし、洗濯もろくにできない。
 
 お父さんに家事は任せられない。

 「だからって、私を置いて行かないでよ。1か月1人は心細いし、不安。」

 「大丈夫よ!」
 
 何が大丈夫だ!

 母上よ!
 
 頭がおかしくなってしまったのか?

 小学生の頃、「ママ、あったまいい!」って言ってた自分を叩きたい!

 「大丈夫って、何を根拠にっ!」

 「美琴が不安って言うのを見越して、強力な助っ人を呼んだの。1か月間、その子と暮らしてもらうからね。」

 「その助っ人とやらは、私の知ってる人?」

 一緒に暮らす上で、自分が知っている人かは重要だ。

 「あんたも知ってる人よ!今いるから、ちょっと呼んでくるね~」