「これ返すためにこんな時間まで待ってたの？」
横並びで歩き出して1,2分経ったところで瀬田さんが聞いた。
「いや、今日部活があってもともと帰って来るのが遅くなって」
部活が18時くらいに終わって、駅に帰って来たのは19時過ぎだった。ここらへんは田舎で、家と学校の間の移動にはなかなかの時間がかかる。
「あ、そっかコンテスト？あるって言ってたね。どうだった？結果」
だめだったと伝えると、瀬田さんはそっかー、と優しい声で言った。
「あの俺がうつってた写真出さなかったの？」
瀬田さんがからかうように笑って言った。こういうところで、出しませんよ、と愛想のない返事をしてしまうのが私だ。
瀬田さんがなにか質問をする、私がつまらない回答をしてしまう、瀬田さんが笑う、の繰り返しを何度かしたところで、10分ほど経った。
「もうひとりで大丈夫？というか俺が勝手に送ったんだけど」
送ってくれた気遣いも、家までは来ない気遣いも優しいと思った。
「大丈夫です。送ってくれてありがとうございます」
瀬田さんは、うん、と優しく微笑んだ。
じゃあね、と手を振る瀬田さんに軽くお辞儀して家に帰った。
