撮れた写真を見ると、男性が物を落とした瞬間が画角内に写っていた。

「すいません、写っちゃいました?」
男性が焦った様子で落とした物を拾い、こっちに走って来た。
「すいません、カメラ向けてる人がいたから慌てて引き返そうと思ったら」
男性は、二冊のスケッチブックらしきノート、ペンケースを手に持っていた。
するとその男性が急に私のカメラを覗き込んできた。
「へえ、、綺麗ですね。ちょっとこの物落としてる人が残念だけど」
いや、それあなたなんだけどな。
「あ、、消しておきますね」
削除しようとすると、男性が私の隣に座り込んだ。

「待って、それ残しておいてください。なんかおもしろいし」
え?と声が出てしまった。こういう愉快な人もいるものだ。
よくわからなかったが、少し間を空けたあとにYESの返事をした。


「大学生ですか?」と急に質問された。高校生と答えると、男性は少し驚いた。
「そうなんだ。大人っぽいし俺と同じくらいかと思った」
爽やかに笑いながら男性はそう言った。同じくらいということは、多分この人は大学生なのだろう。なんか、よくいる話しかけてくるお年寄りの人みたいな感じの人だ。嫌な気はしないけど、会話を続けたいとは思わなかった。しかし黙っているのも申し訳ないので
「美大生とかですか」と、とりあえず聞いた。

「お、そうそう美大生。今年なったばっかりなんだけどね」
ということは、18か19か。
いや、そんなことはどうでもよくて、早く写真を撮りたいのだけど。

「すいません、写真撮らなきゃなんで失礼します」
そう言ってさっさと違うところへ移動した。