瀬川さんが写真をいろいろ見ている間なにをすればいいのかわからずきょろきょろしていると、机の上の絵が目に入った。
手前にたくさんのひまわり、奥には塔が建っている。
「……すごい」
思わず声に出てしまった。瀬川さんはぱっとこっちを向いて、ん?と言った。
「…いや、それすごいなって…」
瀬川さんは私の向ける視線を辿った。
「あ、絵?あはは、ありがとう」
この絵を描くために毎日ここに来てるのかな。
「…あれ、でもひまわりも塔もこの公園にはないですよね」
ここから見えるのは噴水やこどもたち、花もあるけどひまわりはない。
「スケッチしにきてるんじゃないんだよね。家だと集中できないからここに来て描いてるんだ」
そういうことか。こんなに暑いと逆に集中できないんじゃないかとも思ったが口にはしなかった。
ひまわりと塔、空しか描かれていないが本当にすごかった。なにがすごいか説明はできないけれど、すごかった。心が浄化される気がするとはこういうことだ。
「綺麗です、すごく」
瀬川さんは、今度は少し恥ずかしそうにありがとうと言った。