「おはようございます」
真剣に絵を描く背中に声をかけるのは少し迷ったけど、なんとなく良いタイミングで挨拶をした。
「あっ澪ちゃん!おはよう、ほんとに来てくれたんだね」
まあ、行かない理由はなかったし暇だったし。
「澪ちゃん今夏休み?」
そうです、と答えると、瀬田さんは俺もーと爽やかに笑った。

「よし、じゃあ写真見せてもらおうかな」
私はカメラを写真フォルダを開いて瀬田さんに渡した。前のSDカードも一応持って来たけど、それは渡さなかった。
勝手に見ていいの?という質問に、はい、と答えると、瀬田さんは一枚一枚じっくり写真を見ていった。

「なんか、なんだろ…ほんとまじで綺麗。語彙力なくて綺麗って言葉しか出てこないんだけど、すごい心が浄化される気がする」
綺麗な写真を見ると心が綺麗になる気がするのはすごくわかる。芸術は人の心を動かす。
でも、自分の写真が対象になると腑に落ちない。
「これ入選したやつだよね。うつってるのこの前来てた妹さん?」
海がランドセルを背負ってはしゃいでいる。始業式の帰りにお母さんと海がお花見に行くと言うので私もついて行った時に撮った。
はい、と言うと、かわいいと瀬川さんはつぶやいた。
「写真家さんみたいだね」
反応に困って少し首を振ると、ふふと瀬川さんが笑った。