「……終わったあ…」
3日目の朝にして古典の課題が終わった。古典でこの量はおかしい。

急に、ドタドタドタ、と階段を上がってくる音がした。
おねえちゃーん、とドアの向こう側から声がした。海が公園で遊びたいらしい。

「澪ごめんね、今日だけ公園連れてってくれる?」
ちょうど写真も撮りに行きたかったし、大丈夫だよ、と返事した。



「あっつ…。よくそんな元気でいれるね」
こんなに暑い中、海はるんるんだ。若いってすごいな、と16歳なりに思う。
海がボールで遊ぼと言うのでしばらく遊んでいたけど、暑すぎてギブアップした。ひとりでボール遊びをしている海の写真を撮りながら休憩する。
「海ー、ちゃんと帽子被ってー」
お母さんが被っていきなさいと海に被せた帽子を海が取ったので注意したとき、



「澪ちゃん?」

突然、私の名前を呼ぶのが聞こえたのであたりを見渡すと、こっちに向かって小さく手を振っている男の人がいた。

あ、瀬田さん、だっけ。

「久しぶりだね」
と、瀬田さんはこっちにやって来て言った。
「あ、こんにちは」
久しぶりと言っても2週間ぶりくらいかな。すごく親切にしてくれた人だし、はっきり覚えていた。
「隣、座ってもいい?」
瀬田さんは少し控えめに聞いた。はい、と答えると、ありがとうと言いながら私の隣に座った。
「今日も写真撮りに来たの?」
私の手にあるカメラをちらっと見て瀬田さんが言った。
「妹が公園で遊びたいって言うので、ついでに」
瀬田さんはなるほどね、と爽やかに笑った。

「お姉ちゃーん、海あれであそぶからボールもってて」
海がこっちに来て、ボールを渡してきた。今度はブランコに乗りたいらしい。