空は遥か遠いパライソのような存在だった。




 誰もが憧れ目指すけど、そこには決して届かない。そう、はじめから届くはずなんてない――だって、人は空から見捨てられたのだから。

 空を紡いだ物語、空の詩歌、空の絵画、空の雑貨。どこへ行っても『空』にまつわるものが、この世界には存在している。

 誰もが空を愛し、母と呼ぶ中で、カナリアだけが馬鹿馬鹿しいと思っていた。そのため周囲から浮いてしまい、今では誰も寄りつかなくなった。


 人々の呪いのような空への愛を聞く度辟易した。聞きたくないが、カナリアの耳は人並み外れていいのが悩みの種だった。


 どうして捨てた空なんて、いつまでも想うのだろうか。



 めんどくさいだけじゃない。

 どうせ叶わない望み。