変な空気を払拭しようと得意の作り笑いで伝えると、国道に出る交差点でまた赤になる。
「……嘘。本気で頷いたよね? ……行こう。俺も本気で清水寺の舞台から飛び降りたい気分。2人で飛べば~怖くない!」
彼は、軽い口調とは反対に怖いほど真剣な眼差しを向け、右折車線に進路変更した。それは、京都方面に向かうのを意味した。
「……もう、冗談は」
「生憎冗談は、得意分野じゃない」
「……は、早く左折に戻って下さい」
彼の全てを見透かすような目に胸のときめきを悟られたくなくて、ついキツい口調で返した。
「もうよそう。俺も君も本音に蓋して人の為、エゴの為に生きるのは。……やっと気づいた。金や出世がゴールじゃないって。愛が一番なんて綺麗事言わない。でもやっぱり幸せな家庭を築きたい。真に愛する人と……。君が気づかせてくれた。君との出逢いで確実に俺の中に革命が起きてる。……君もだろう? 何より愛ある幸せな家庭を求めてる。今なら間に合う! そう気づかせてくれたこの出逢いは……きっと偶然じゃない」
「……………………なら運命とでも? ……笑っちゃいます。革命なら御一人で」
彼は、私の冷ややかな目と口調に、酷く悲しげに目をそらし口を噤んだ。
……ごめんなさい、傷つけて。だって本気なわけない、一時の気の迷い。
でも本当は、私も偶然なんかじゃなく奇跡と感じていた。この人をもっと知りたい、一緒にいたいと思っていた。初対面でこんな気持ちは初めてで強く戸惑いを感じていた。こんな短時間でこれほど誰かに惹かれるのも、理屈じゃ説明できない。この奇跡の申し出に何もかも捨てて2人で革命起こせたらと願う。
でもどうにもならない事もあると知ってる。今さらあの人を裏切るわけにもいかない。母を救えるのだからこれでいいはずだったのに、なぜ今さらこんな気持ちになるのだろう? ……この人と出逢わなければ、絶望しながらも母を救う道を迷いなく進んだに違いない。
「ごめんなさい。でも本当に大丈夫ですから」
「……わかった。……戻るよ。こちらこそ申し訳ない。大の大人が、一時の感情に流され他人まで巻き込もうとして。……これが、マリッジブルーってやつかな? まさか自分が経験するとは夢にも思わなかった」
力無き声に頷きながらも、本音は右折を願う私がいた。
私は、彼との出逢いで歯車が狂い始めたのを酷く不安に感じつつも、なぜか一筋の光が差し込み希望を手にした気がした。錯覚、同情と理解しながらも不思議と胸が浮き立っていた。
しばし無言の後、ふと視線を感じ隣の彼を見つめると、今にも泣き出しそうな眼差しで見下ろされ、堪らなく胸が痛くなりいつもの癖の強がりの笑みで不安を隠した。
「……嘘。本気で頷いたよね? ……行こう。俺も本気で清水寺の舞台から飛び降りたい気分。2人で飛べば~怖くない!」
彼は、軽い口調とは反対に怖いほど真剣な眼差しを向け、右折車線に進路変更した。それは、京都方面に向かうのを意味した。
「……もう、冗談は」
「生憎冗談は、得意分野じゃない」
「……は、早く左折に戻って下さい」
彼の全てを見透かすような目に胸のときめきを悟られたくなくて、ついキツい口調で返した。
「もうよそう。俺も君も本音に蓋して人の為、エゴの為に生きるのは。……やっと気づいた。金や出世がゴールじゃないって。愛が一番なんて綺麗事言わない。でもやっぱり幸せな家庭を築きたい。真に愛する人と……。君が気づかせてくれた。君との出逢いで確実に俺の中に革命が起きてる。……君もだろう? 何より愛ある幸せな家庭を求めてる。今なら間に合う! そう気づかせてくれたこの出逢いは……きっと偶然じゃない」
「……………………なら運命とでも? ……笑っちゃいます。革命なら御一人で」
彼は、私の冷ややかな目と口調に、酷く悲しげに目をそらし口を噤んだ。
……ごめんなさい、傷つけて。だって本気なわけない、一時の気の迷い。
でも本当は、私も偶然なんかじゃなく奇跡と感じていた。この人をもっと知りたい、一緒にいたいと思っていた。初対面でこんな気持ちは初めてで強く戸惑いを感じていた。こんな短時間でこれほど誰かに惹かれるのも、理屈じゃ説明できない。この奇跡の申し出に何もかも捨てて2人で革命起こせたらと願う。
でもどうにもならない事もあると知ってる。今さらあの人を裏切るわけにもいかない。母を救えるのだからこれでいいはずだったのに、なぜ今さらこんな気持ちになるのだろう? ……この人と出逢わなければ、絶望しながらも母を救う道を迷いなく進んだに違いない。
「ごめんなさい。でも本当に大丈夫ですから」
「……わかった。……戻るよ。こちらこそ申し訳ない。大の大人が、一時の感情に流され他人まで巻き込もうとして。……これが、マリッジブルーってやつかな? まさか自分が経験するとは夢にも思わなかった」
力無き声に頷きながらも、本音は右折を願う私がいた。
私は、彼との出逢いで歯車が狂い始めたのを酷く不安に感じつつも、なぜか一筋の光が差し込み希望を手にした気がした。錯覚、同情と理解しながらも不思議と胸が浮き立っていた。
しばし無言の後、ふと視線を感じ隣の彼を見つめると、今にも泣き出しそうな眼差しで見下ろされ、堪らなく胸が痛くなりいつもの癖の強がりの笑みで不安を隠した。


