★.:* ◌𓐍𓈒 LAST シンデレラ 𓈒𓐍◌ *:.★~挙式前夜に運命の出逢い~

 突然の呼び捨てが照れくさくも嬉しいなんて悟られたくなくて、わざと疑い眼でジーッと見つめると右手を宣誓するように向けられた。

「誓って部屋に連れ込みも送り狼もしません。……結からの誘いなら喜んでノるけど」

「有り得ません!」

「それは、残念」

 絶対残念なんて思ってない顔が悔しくて、絶対お持ち帰りさせてやる! と固く誓うが、ふと矛盾に気づき笑いが込み上げた。

「……結が壊れた。……やっぱ帰ろう」

 私は、彼が自分のグラスを飲み干しスマホに手を伸ばした腕をサッと掴んだ。

「最後の晩餐に相応しい最高級の物ご馳走する約束です!」

「……かしこまりました 」

 すぐに笑ってオーダーを終えた彼に紳士的な微笑みを向けられると、お酒の力も加わりぽやん……と見惚れてしまう。

 彼は、そんな私に眉を下げて笑いまた頭を撫で始めた。

「子供扱いしないで下さい」

「結って目くりくりで小動物みたいに可愛いからつい撫でたくなる」

 ……小動物。

 良く言われるけど大人っぽさに憧れる私には、微妙な褒め言葉。

「おでこ出せばもっと大人っぽく見られるんじゃない?」

彼は、そんな私の心の声を見事キャッチしたよう。

「そうですけど、緊張すると眉間に皺寄るから……」

「まだまだ若いんだし気にしすぎ。……よしよし」

 彼の再び頭を撫でる手を外し飛ばすと、また楽しげに手を伸ばされ最後はシカトした。

 その後もイジりまくり満足した様子の彼は、涼しげな顔で長い脚を組みながら地上で瞬く星屑を見下ろす瞳に影を落とす。

 その横顔が余りに美しくて胸が締め付けられるほどに切ない。

「……そんな目で見つめられるとオジさん勘違いしちゃうよ?」

 彼は、大人の色気をダダ漏れさせ妖しげに微笑む表情をふと真顔に変換させた。その表情に、この騒がしい胸はロックオンさせられそうになる。

 ……近付くシャープな頬をぼんやり見ながら唇を待ち望む瞬間、彼は目の前で息を吹き掛けてきた。そして無邪気な笑みで満足げにグラスを飲み干した。

 悔しいけど完全に遊ばれてる! さっきのキスもペットの子犬にチュッに違いないのが悔しい! でも大人の女性なら軽いキスくらいで目くじら立てないたりしないか。