桜の花びらのむこうの青

その時、カフェの扉が開く音がして、店員さんが「いらっしゃいませ」と笑顔を向ける。

ドキン。

私も慌てて扉の方に顔を向けると、店内を見回している柳江さんがいた。

「柳江さん!」

思わず立ち上がってその名前を呼ぶ。

「森村さん?待たせて申し訳ない」

薄暗い店内に玄関の扉から差し込む光が彼の笑顔を照らす。まるでスポットライトみたいに。

柳江さんは足早にこちらに来るとチャコールグレーの薄手のジャケットを脱いで私の正面の席に腰を下ろす。

ジャケットの下にはシンプルな白い長袖のTシャツだったけど、すごく似合っていて、彼を艶っぽく見せていた。

「ごめんね、急に。しかも待たせて」

「いえ、大丈夫です。今日はお忙しい中わざわざ届けて下さってありがとうございます」

そう言った私の顔を正面からじっと見つめた彼はプッと吹き出す。

「君はやっぱりいつも一生懸命だ。僕といるときは肩の力抜いて」

その言葉はまるでおまじないみたいに、言われた瞬間から私の緊張した体の力が安心したかのように抜けていく。

彼は店員さんを呼ぶと、あまり時間がないから飲み物だけでもいい?と確認し、私の紅茶と自分のコーヒーを頼んでくれた。

「先日の取材では色々と準備ありがとう。おかげで何の問題もなくスムーズにいったよ」

「いえ……」

さっきから鼓動が激しくて、まともに彼の顔を見ることができない。

「はい、これ写真。メールで画像処理したものを送ってもいいんだけど、俺の拘りでこういうものは手渡したくて」

そう言って白い封筒を差し出した。

封筒の中をゆっくりと引きだす。

社長と記者さんと並んだ皆笑顔の素敵な写真が出てきた。

「これ、二枚入れてるから社長にも渡してもらえるかな」

「はい」

あれ、その二枚以外にもその後ろに写真が重なっている。

集合写真だけをゆっくりテーブルの上に置くと……。

私??!