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平日は社長秘書として働き、週末は柳江さんの事務所に通う。
忙しい私を気遣って、柳江さんから月に二回は半ば強制的にお休みを入れるよう言われた。
私には柳江さんの事務所に行くことが楽しみで、平日の仕事も難なく乗り切れていたから、休みなんかなくても平気だったのに。
私に与えられた仕事は、主に会計処理や、彼のスケジュール管理、来客接待だ。
秘書の感性が生かされる仕事がほとんどだったけれど、たまに任される写真の整理は新鮮で、そのうちに、彼の撮る写真が彼の信念そのものだということに気づいていく。
被写体は全て何かを含んでいる。
人物の目の奥に悲しみが見えたり、幸せが宿っていたり。
なんてことない風景の向うに誰かの生活が見えたり。
私が一番心惹かれたのは、満開の桜の写真。
淡いピンクの桜の花の向うに濃い青空があった。
桜よりもその青空になぜか目を奪われる。
彼はどんな思いでその桜と空を撮ったんだろう。
「俺はそこにある真実を見る人にも感じてもらいたいんだ。微妙な感じ方の違いはあるだろうけど、俺が伝えたい真実はきっとその中に存在しているからね」
彼はいつだかそんなことを言っていた。
柳江さんの事務所に通うようになって丁度一年目の春。
忙しい最中だったけれど、彼が私のためにささやかに事務所で一年間お疲れ様会を開いてくれた。
二人で食事やお酒を飲むなんて初めてのこと。
浮足立っているのは私だけ?
彼が手配してくれたオードブルとワインで乾杯する。
そして何より驚いたのは、仕事で知り合ったという花屋から桜木の投げ入れ花器が事務所に届いたこと。
こんな見事な桜が自分の目線で見れるなんて初めてで思わず写メをたくさん撮ってしまった。
柳江さんはそんな私を子供を見るような優しい眼差しで見ている。
「すごいですね。こんなの見たことないです。そういえばお花見もしばらくしてないかも」
「それならよかった。俺もお花見なんてずいぶんご無沙汰だよ」
桜の花びらがヒラヒラと舞い落ちる。
ワインのせいか、とても気分がよく、いつもより饒舌になっていたのかもしれない。
この場所で、柳江さんと二人で話す時間がとても愛おしくて、いつまでもここにとどまっていたくなる。
平日は社長秘書として働き、週末は柳江さんの事務所に通う。
忙しい私を気遣って、柳江さんから月に二回は半ば強制的にお休みを入れるよう言われた。
私には柳江さんの事務所に行くことが楽しみで、平日の仕事も難なく乗り切れていたから、休みなんかなくても平気だったのに。
私に与えられた仕事は、主に会計処理や、彼のスケジュール管理、来客接待だ。
秘書の感性が生かされる仕事がほとんどだったけれど、たまに任される写真の整理は新鮮で、そのうちに、彼の撮る写真が彼の信念そのものだということに気づいていく。
被写体は全て何かを含んでいる。
人物の目の奥に悲しみが見えたり、幸せが宿っていたり。
なんてことない風景の向うに誰かの生活が見えたり。
私が一番心惹かれたのは、満開の桜の写真。
淡いピンクの桜の花の向うに濃い青空があった。
桜よりもその青空になぜか目を奪われる。
彼はどんな思いでその桜と空を撮ったんだろう。
「俺はそこにある真実を見る人にも感じてもらいたいんだ。微妙な感じ方の違いはあるだろうけど、俺が伝えたい真実はきっとその中に存在しているからね」
彼はいつだかそんなことを言っていた。
柳江さんの事務所に通うようになって丁度一年目の春。
忙しい最中だったけれど、彼が私のためにささやかに事務所で一年間お疲れ様会を開いてくれた。
二人で食事やお酒を飲むなんて初めてのこと。
浮足立っているのは私だけ?
彼が手配してくれたオードブルとワインで乾杯する。
そして何より驚いたのは、仕事で知り合ったという花屋から桜木の投げ入れ花器が事務所に届いたこと。
こんな見事な桜が自分の目線で見れるなんて初めてで思わず写メをたくさん撮ってしまった。
柳江さんはそんな私を子供を見るような優しい眼差しで見ている。
「すごいですね。こんなの見たことないです。そういえばお花見もしばらくしてないかも」
「それならよかった。俺もお花見なんてずいぶんご無沙汰だよ」
桜の花びらがヒラヒラと舞い落ちる。
ワインのせいか、とても気分がよく、いつもより饒舌になっていたのかもしれない。
この場所で、柳江さんと二人で話す時間がとても愛おしくて、いつまでもここにとどまっていたくなる。



