「愛だ何だって、青臭いガキだな。ガキ同士、お似合いだよ。俺のお古でよけりゃ、せいぜい純愛ごっこしてろ」
「こっちも、あんたなんかと縁が切れてせいせいするけどな…だけど、最後に謝れよ。彼女への暴言を」
「馬鹿馬鹿しい。こんなつまんねぇ小娘に謝る必要あるか」
 僕は昔から、真面目な優等生だと言われていた。冷静沈着、泰然自若だとも。
 そんな僕なのに、何故だろう?
 気付けば、力一杯、目の前の男を殴り付けていた。初めて本気で人を殴ったので、力加減を知らなかったが、かなりダメージを与えたらしい。奴は、地面に倒れた。
「帰れ!もう二度と彼女に近づくな!」
 怒りに任せてそう言い放つと、さっきまでの人を見下した態度とは真逆に、怯えて逃げていく姿が何とも滑稽だった。