こんな穏やかな時がずっと続けばいいのに。
 そして、純ちゃんが完全に不倫相手のことを吹っ切れたら、僕はもう彼女が悲しまなくていいように、絶対に大切にする。
 コンビニで買ったお菓子とアルコールを沢山抱えて、純ちゃんのマンションの前に辿り着いた時、彼女は硬直した。
「どうした?」
 僕が尋ねると、マンションのエントランス前には、30代後半と思われるスーツ姿の男の姿が居て、僕らを睨み付けている。
「へぇ…こっちが連絡してやっても無視するから見に来てみりゃ…お友達ってのは若いイケメン君だったわけか。清純ぶって、よくやるよな」
 男は、煙草をポイ捨てし、忌々しげに足で踏みつけた。
「…携帯灰皿持ってるでしょ。ここに捨てないで。近所迷惑になる」
 純ちゃんが小声で抗議すると、
「話をすり替えるな!大人をバカにしやがって…。あーアホくさい。お前が見るからに男を知らなさそうだったから付き合ってやったけど、もう要らんわ。せいぜい新しい男に捨てられないように頑張れや、このファザコンが」