それが本心であれ、僕にそんなことは無理だ。
 誰より大切な相手を傷つけられないのも勿論そうだが、抱いたあとで本当に深く傷つくのは、きっと僕のほうなのも目に見えているから。
 だから、こうしてただ傍に居るしかできない。
 今のままで「ただ傍に居られるだけで幸せ」とは思っていない。
 まだ、純ちゃんは、心から笑ってはくれないから。
 時折僕は、どうしようもないことを思うことがある。
 再会すべき時が遅すぎたのではないか。もし、僕が浪人などしていなければ…と。
 純ちゃんが淋しい時、いつも僕が傍に居たなら、不倫に走ることもなかったのかと思うと、悲しい運命を恨みたくもなる。
 しかし、そんなことを思ってみても、今更どうにもならない。過去は変えられないのだ。
 だから、未来のために、必死で悪足掻きしている。
 たとえそれが、不確かな未来だとしても、ほんの少しでも希望がある限り、僕は諦めない。