ドキドキと煩(うるさ)く鳴る心臓音が、雪夜に聞こえてしまいそう
「あ…あの……雪夜?」
パッと離れると、赤いであろう顔を覗き込まれる
「あぁ、悪ぃ。大丈夫だったか?」
至近距離で目が合うと、何故かすぐに逸らされる視線
「………腹、減ったな。飯食うか?」
「う…ん」
何か不思議……付き合う前の頃みたいに胸がザワザワして落ち着かない
いつも一緒に居たのに、こんなの慣れっこの筈なのに、こんなにドキドキするのは いつ振りだろう
外を見れば太陽は天高く上がり、蝉の声がより一層大きくなっていた
顔を洗って、歯を磨いて部屋に戻ると食欲をそそる匂いが漂っている
ベーコンに目玉焼き、バターたっぷりのトースト
定番の朝ご飯……いや、昼ご飯?
「美味しそう。私、運んどくよ」
雪夜が顔を洗いに行っている間に、料理をテーブルに運び準備してくれていたカップにコーヒーを淹れる
雪夜はブラック、私はミルク入り
お揃いのマグカップを、テーブルに置いて改めて見ると以前のままだと錯覚しそう
「ねぇ…さっき。何で一緒に寝てたの?」
少し気になっていた事を口にした
「ん?あぁ…お前 結構、魘されてて……泣いていたから」
「え?……そ、なんだ」
夢で泣くとか…恥ずかしい
確かに、いい夢じゃなかったけど



