空になった瓶には、マジックで『雪夜、大好き♡乃愛』の文字
その日から雪夜は ずっとこの香水を使い続けてくれている
「捨てればいいのに……」
そう言って空の瓶を手に取り、文字を指先で擦(なぞ)る
「捨てないよ。何一つ」
いつの間にか部屋に戻って来た雪夜が、私の手から瓶を取り、それを憂いを帯びた瞳で見つめた
「ここにある物は…何故か捨てれないんだ。……いや、捨てたくないのかもしれない。俺にとっては大切な物だと感じるから…」
今日…ここに来て良かった
心にポッカリ空いた穴が少し満たされたような気がした
「さ…寝よ。ベッドは使っていいから。俺はソファーで寝るし」
壁時計を見ると3時になっていた
寝る支度をしてベッドに入って目を閉じた



