暫く走って、皆が見えなくなった頃に力が抜けてトボトボと駅に向かって歩く
雪夜が好き
雪夜を愛している
気を抜けば溢れてくるこの想いを一体どうすればいいのか分からない
この感情を受け止めてくれる雪夜は もういないのに
ズキンと胸の奥が痛んだ
そんな痛みを吐き出すように大きく息を吐き出し前を向いた
日が傾いているのに、ジリジリと肌が焼けるように暑い
そんな中 ようやく駅が見えてきた
美沙希には申し訳ないけれど、やっぱり遊ぶのは無理だと気付いた
明日、断りの電話を入れよう…
駅に着き 額から流れる汗をハンカチで拭(ぬぐ)っていると、ガシッ肩を掴まれた
ビックリして後ろを振り返ると、さっき別れたばかりの雪夜がいた
「な、んで?」
戸惑う私の腕を掴み人気(ひとけ)のない所まで連れ出すと雪夜は足を止めた
「この前は悪かった…涼介から色々言われたよ。事故が原因で何故かお前の事だけが記憶から消えてるって…。俺は あの時 いつも言い寄ってくる女達と同じかと思って、キツく当たってしまったんだ。でも……突然、彼女とか言われても、俺は お前の事知らないし、『好き』って感情もないから…だから……」
後ろを向いたまま話す雪夜は きっと今まで色々考えてくれたんだろう
雪夜は、優しいから…
「うん、そうだよね…私こそ悪かった。ごめんね。知らない女から突然そんな事 言われても混乱するだけなのに…なのに私は焦って、取り乱して……。雪夜、友達に戻ろう。それが雪夜にとっても、私にとっても一番いいと思うの」
美沙希が言った『もう一度好きになってもらえばいいじゃん』、その言葉が今の私の心の支えになっていた
私は雪夜の前に回り込み、笑顔で向き合い今までの雪夜とお別れをする
「雪夜、今まで ありがとう。大好きだったよ……バイバイ」
また恋をすればいい
目の前の雪夜は今にも泣きそうな顔をしていた
私は そんな彼を置いて駅のホームへ足を向けた