ある日……優愛は、敵対している組の奴らに攫われて、助けに駆けつけた時には もう遅くて…



体も心も傷つけられた優愛は現実を受け止めきれず、心が壊れかけていた



それでも何とか持ち直した時、優愛は体調を崩し…何かに怯えるようになった




その時の俺は、優愛が何に怯え…何を悩み、何を思っていたのか気付いてやれなかった



それから 数日後、優愛は誰にも打ち明ける事なく歩道橋から飛び降りた



妊娠が発覚したのは死亡してから…




「優愛を守ってやれなかった。ずっと側にいたのに救ってやれなかった…本当に、済まない」



『若』は深く頭を下げた



「そ…んな……姉が 自殺だったなんて」



いつも明るくて笑顔だった姉は、亡くなる少し前から元気がなくて部屋に引き篭もっていた



小学生の私には、それが何でなのかと疑問にも思わなかった


少なからず、私の前では笑顔でいてくれたから



それから すぐ、姉は姿を消した


両親から『事故にあった』って聞いて、ずっと事故死だと思っていた




目の前で頭を下げ続けている彼を見る



この人も…今の私みたいに気持ちの整理が出来なくて立ち止ってるんだ



姉が亡くなったのは5年前
  



この5年間、ずっと後悔してきたんだ…たった一人で…誰にも打ち明けるられずに





「頭を、上げて。……『あっ君』ってあなたの事だったんだね。姉は、いつも幸せそうな顔して あなたの話しをしていたよ。亡くなった後、姉の机の引き出しから『あっ君』への1通の手紙が出てきて、その手紙を『あっ君』に会えたら渡そうと思っていたの。……今度、取って来くる」



顔を上げた彼は、いつも通りの冷たい表情…彼のいる この環境が、そうさせているのかもしれない



本当の彼は…その冷たい表情の下は……きっと泣いている



もう…彼を開放してあげよう




「姉は、間違いなく幸せだった。いつも『あっ君の笑顔が好き』と言ってた。だから、もう泣かないで」




『若』は、ひと粒の涙を流した