剣城くんは押し強い







ひまわり畑を幾分か歩いた私たちは、最初に見たアーチ看板───入り口の方へと向かっていた。

そしてその途中で、剣城くんが「あっ」と思い出したかのような声を出す。

「どうしたの?」と、問うと、歯切れの悪そうな返事が返ってきた。


「…っ、えーっと……あっ、お手洗い、行ってくるから…その、盾石は入り口前で待ってて」


そう言って、回れ右をした剣城くんは、踵を返すように小走りでその場から去って行った。

小さくなっていく彼の背中をぼんやりと眺める。


…剣城くん、走るほど我慢していたのか。

なんだかすごく申し訳なくなってきた。

気づいてあげられなくてごめん、と心の中で謝罪をし、言われた通りに入り口前で待つことにした。







「盾石!待たせてごめん!」


しばらくして、剣城くんがこちらに走ってくるのが見えた。


「…ううん、私の方こそごめん」

「へっ?何のこと?」


頭上に疑問符を浮かべる剣城くん。


「…いや、剣城くん、トイレ相当我慢してたのかなって……」

「…えっ、あ、あー……えっと、ごめん。トイレは嘘」

「えっ…」

「盾石にコレ(・・)渡したくて……」