精一杯、威嚇しながら睨みつけてやったが、全く動じていない。
少し悔しい気持ちと同時に、彼の笑顔を見て、心臓がドクンッ…と、大きな音を立てた。
この感覚を、私は知っている。
以前の体育祭の時と同じ感覚。
剣城くんの笑った表情に、何故かときめいてしまう。
やっぱり、剣城くんの笑顔はいやじゃない。
むしろ、もっと見ていたいって思うのはどうしてだろう。
──『おまえ、今好きなやついる?』
ふと、夏休み前に柚希が言っていたことを思い出す。
"好きな人"───。
じっ…と、剣城くんを見つめる。
それに気づいた剣城くんがこちらに振り返って、不思議そうに首を傾げるので、彼の優しげな瞳と目が合ってしまった私は、慌てて視線を逸らした。


