剣城くんは押し強い



「……」


ちらっ、と隣を見ると、剣城くんは物珍しそうに視線をあちこち動かしてひまわりを眺めている。


すっかり忘れていたけど、私、剣城くんと普通に楽しんでしまっているではないか。

何人かでここに行くと思っていたつもりが、まさかの剣城くんしかいなかったし、ちゃっかり2人で来ちゃったし…。


クラスメイトたちに今日のことについて誘ったが、"剣城くんもいる"とは一言も言っていない。

つまり、クラスメイトたちからすれば、私と剣城くんが今、一緒にひまわり園に行っていることなんて、誰も知らないわけで。


以上のように、2人の男女が密かに会って外出をする───いわゆる私たちは逢瀬をしていることになる…!?


…い、いやいやいや、別にそのつもりで来たんじゃないし。

ただ、剣城くんが一緒に行ってあげるって許可を得ているのであって、私は───…。


「盾石〜」

「……んえ??」


剣城くんに呼ばれて振り返ったが、いつの間にか彼の姿が忽然と消えていて。


「どーこだ」

「…はあ??」


どこかから、聞こえてくる声に眉をひそめる。


「えっ、剣城くんどこ!?」

「こっちだよ」

「いないよ!?」

「もうちょっと後ろの方〜」