剣城くんは押し強い


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夏休みに突入し、ひまわり園に行くことになった当日。

駅前に集合しよう、と連絡が来たので、5分前に到着したのだが───…。


「…えっ、剣城くん1人!?」


私の声に気づいた剣城くんが顔を上げて、「おはよう」と挨拶をしてくる。


「あれっ!?剣城くん、今日のお出かけ誰も誘ってないの!?」

「"誘ってない"って、どういうこと?」

「…い、いや、私、てっきり何人かで行くと思ってたから……」


ももちゃんや柚希、他のクラスメイトたちに片っ端から声をかけて誘ったのだが、見事、全員に断られるという始末。

剣城くんの方が人間関係広いだろうし、きっと何人か今日のことについて話していると思っていたのに…。


「俺は盾石と2人で(・・・)行くつもりだったけど」

「はっ!?」


何言ってんだこの男…!!


目が飛び出そうなくらい、瞬きをしながら棒立ちになっている私に、剣城くんはくすっ、と笑みをこぼす。

それから「行こ」とだけ言って、歩き出した。