剣城くんは押し強い





「ただいま〜」

「お父さんおかえり!あのさ!私、夏休み、ひまわり園行くことになったんだ!それでね、せっかくだし、お母さんが若い頃に着てた服借りようと思うんだけどいいかなぁ!?」

「うぉえっ?」


その日の夜、お父さんが仕事から帰宅して早々に、私はお母さんの服を持ち出した。

早口で話す私にきょとんとするお父さん。

そんなお父さんを他所に、黄色いギンガムチェック柄のキャミソール型ワンピースを勢いよく真上に掲げる。


「ひまわり園って……あぁ、よく皆で行ってたとこか!母さんが天国に逝ってしまってから、全く行けてなかったもんなぁ…」


父さん仕事ばっかでごめんなぁ…と、悲しそうに微笑むお父さんに、私は首を横に振った。


「…いや〜、それにしても懐かしいなぁ。僕と母さんが初めてデートした時にそのワンピース着てたんだよなぁ…。母さんすごく可愛かったなぁ…」


そう言ったお父さんは、しみじみとした表情でワンピースを見つめた。


「そういえば柚奈、ひまわり園は誰と行くんだ?」

「…えっと、く、クラスメイト!」

「クラスメイトって……ももちゃん?」

「そっ…い、いや……」

「えっ、ももちゃんじゃないの?……ハッ!まさか、同じクラスの男子と行くつもりなのか!?」