剣城くんは押し強い



───そう、好きだった…。


お父さんとお母さんが初めて2人でデートした場所。

お父さんがお母さんにへと、ひまわりの花束を贈って告白したのだと教えてくれた。

その時の2人がすごく幸せそうな顔で話していたのを今でも覚えている。


ひまわり園には、毎年のように行っていたけど、今では家族皆で出かける機会がほとんどなくなった。

お父さんは仕事で忙しいし、柚希はアルバイトで土日はほぼ家にいない。


「俺も昔、ひまわり園行ったことあるよ。あそこ、観光名所で有名だもんな」

「そうだね…」


剣城くんの視線がポスターから私へと移る。


「……一緒に行く?」

「……えっ」


恐る恐る彼を見上げる。


「盾石、すごく行きたそうな顔してた」

「……」


"すごく行きたそうな顔"って、一体私はどんな顔をしていたというのだろう。

でも、剣城くんの言う通り、"行きたい"のは本当のこと。


「…い、一緒に行ってくれるの……?」

「うん、いいよ」

「……っ、ありがとう…!」


嬉しさのあまり、素直にお礼を伝える。

そんな私を見た剣城くんは、一瞬だけ目を見開いた後、すぐさま穏やかな笑みを浮かべた。


「楽しみだな」

「うん…!」


家族での思い出の場所にもう一度行けることが嬉しくて、剣城くんに釣られて私も笑顔で頷いた。