「い、今の剣城くん全然爽やかじゃない……」


無意識に声を漏らすと、剣城くんはゆっくり私の顔に向かって手を伸ばして。


「盾石はさ、爽やか=無害な人だと思ってる?」


不敵に笑いながら親指でそっと私の唇をなぞった。

その瞬間、ゾクッ…と背筋が凍った。

次第には冷や汗まで滲み出てくる。


「ごめんな、突然で動揺する気持ちはわかるよ。でも俺、ずっと好きだったんだ。あの日(・・・)から盾石に恋をして、頭の中盾石のことばっかで、好きで好きでたまんなくておかしくなりそう…」


とろんとした甘ったるい瞳で見つめる剣城くんは掬い取るようにして私の手を握った。



「俺、盾石だけは誰にも譲れない。盾石がめちゃくちゃ好きなの。だから、絶対に俺のこと好きにならせてみせるからよそ見、しないでね」


ぐっと距離を詰めてきた剣城くんは耳元でそう囁いた。

そして、あまりの近さに耐えられなくなった私は、抱きかかえていた鞄を防具代わりにして押し返す。