「…あぁ、これ?可愛いでしょ、貰ったんだ!……誰に貰ったのかは覚えてないんだけどね…」


人差し指で頬をかきながら、小さく笑った。


以前、柚希に聞いたが、はぐらかすように、濁すように話を逸らされて、結局、誰に貰ったのかわからない押し花のしおり。

今までは飾りとして机に置いていたけれど、最近は筆箱に入れて、お守り代わりにしている。


「私の中で、何かすごく大切な物だと思うから、筆箱にしまって、毎日持ち歩いてるんだ」


四つ葉のクローバーの押し花で作ったただのしおりなのに、これを見る度に元気が出るような気がして。


大丈夫、思い出せる。

事故に遭ったあの日から、一部の思い出が───…記憶が曖昧でも、きっと、大丈夫。


「……そっか」


剣城くんは俯いて、そう言った。

彼の声は悲しそうで、だけど、どこか嬉しそうで。


「……剣城くん?」


少し元気をなくした彼に、何か気に障るようなことをしてしまっただろうか…と、焦りながら、顔色を窺う。

剣城くんが視線だけをこちらに向ける。


「…盾石」

「何?」

「好きだよ」

「!?」


色素の薄い瞳に、自分の驚いた表情が映り出した。