早足で扉の方に向かって、引き手部分に手を置いてぐっと力を入れるが───…。
「…あれっ」
───なんで、鍵が閉まってるの…。
不審に思いながら鍵を開けようとした時───。
「逃がすわけねえじゃん」
そんな声がしたと同時にトンッ…と扉に剣城くんの手が添えられる。
恐る恐る顔を上げると僅かに目を細めた彼が見下ろしている。
「返事、聞いてないんだけど」
体の全細胞がこう言っている。
『お逃げなさい』と───。
逃げたいけれど、今すぐに返事をしないと帰らせてもらえなさそうだ。
「…わ、わたしは、すきじゃない……」
恋愛なんて二度とご免だ。
付け足すように心の中でそう呟いた。
「うん、知ってる。だから、盾石が俺のこと好きになってもらえるように頑張る」
「はっ……」
何言ってんの。さっきから何意味わかんないこと言ってんの!?
なんか剣城くん、いつもとキャラが違うというか…。
目がガチというか、まるで獲物を狙うような瞳をしているというか…。
こ、怖っ、なんか、怖いです。