剣城くんは押し強い



いや、これは完全にセクハラだ。

イケメンだからって全て許されると思ったら大間違いだ!!

お母さん、こういう人を"見た目詐欺"って言うんだよ!!


…それにしても、彼は急に音もなく現れるものだから、本当、心臓に悪い。


一つ分、距離をあけて、剣城くんの綺麗な横顔を見上げた。

睫毛が長いな…と、呑気に感心しながら、まじまじ観察をする。


今思ったけど、今日は朝まで剣城くんと一緒ってことだよね…?

自分の家に同級生が遊びに来ているなんて滅多にないから、なんか、緊張する。

ももちゃんとはお互いの家によくお邪魔したりして、慣れてるけども…。


何故か心臓が徐々に高鳴り始める。

ぐるぐる考え事をしていると、剣城くんがいきなりこちらに振り向いたので、びっくりした拍子にピンッと背筋を伸ばした。


「柚希が風呂沸いてるから先に入っていいよって言ってたよ」

「へあっ…う、うん。わかった……」


そう言った剣城くんに目を泳がせながら、うるさく鳴り響く胸を抑えるようにして、和室を後にした。