「ただいま〜」


学校が終わった後に、ももちゃんと寄り道をして帰宅した私は、一息をつきながらローファーを脱いだ。

いつもなら柚希の元気で、少し耳障りな『おかえり〜!!』と返ってくるはずが、今日はやけに静かに感じる。


「柚希ー?」


リビングの中を覗き込むと、テーブルの上にたこ焼き器がどどん、と真ん中に設置されている。

たこ焼き器の近くには、たこ焼き粉や青のり、たこ焼き用のソース。


…何だこれ。


「柚希!」


階段を駆け上がって、『ゆずきのへや』と書かれた扉を勢いよく開ける。


「あっ、ゆずなおかえり〜」


私は目の前の光景にピシッと固まった。

何度も瞬きをしながら、弟の向かい側にあぐらをかいている人物の名前を呼ぶ。


「……つ、剣城くん…?」


なんと、剣城くんが柚希の部屋にいるのだ。


「お邪魔してます」


爽やかな笑顔で礼儀正しく言う彼に「不法侵入だ!!!」と、大きな声を出してしまう。


「…不法侵入って、おまえ馬鹿?」


眉をひそめる柚希に一蹴されるも、私は気にせず「どうして剣城くんがいるの!?」と、問いかけた。