色素が薄くて、ビー玉のような瞳に私の姿が映っている。


「……」

「……」


さーっと、風が吹き通る音が耳元で聞こえてくる中、ただ、彼を見つめることしかできなくて。


「帰ろっか」


にっこり笑って、何事もなかったかのような雰囲気を纏う剣城くんが沈黙を破った。

そしてそのまま立ち上がり、スタスタ歩き出してしまう。

慌てて剣城くんを追いかけて、彼の後頭部を見上げた。



「……剣城く──」

「花言葉、聞かなかったことにして」



まるで、何を聞かれるのかわかっていたような口振りで、私の言葉を遮った。


前を向いたまま、こちらを見ない剣城くんに私は何も言えず、「……うん」と、そう答えるしかなかった。

剣城くんの悲しそうな笑顔が目に焼きついて、脳裏にずっと思い浮かんでいる。


───『"私を思い出して"』


花言葉なのに、私を通して誰かに願うような表情だった。


剣城くんは昔、想う相手がいたのだろうか。

今、私のことを想ってくれているように、私の知らない誰かを好きだったのだろうか。


そう考えた途端、胸の奥がぎゅっと締め付けられたような感覚がした。