「シロツメクサ、いっぱい咲いてる!」
ちょいちょいっと、手招きをしてきたので、彼の元へ向かい、隣に腰を下ろす。
どこか懐かしいような表情で、シロツメクサに視線を落とす剣城くんは、1本だけ取って、私に見せてきた。
シロツメクサの周りには、三つ葉のクローバーが沢山生えている。
「なあ、盾石。シロツメクサの花言葉って知ってる?」
茎をつまむように持ち、くるくる回しながらそう言った。
シロツメクサを見つめる剣城くんの長い睫毛が頬に影を落とす。
夕映えに包まれた彼の横顔がとても綺麗で、無意識に見惚れてしまっていた。
「…剣城くんは、知ってるの?」
「うん、知ってる」
どう言った意味なの?と、続けて質問をする。
「『約束』」
伏し目がちに言葉を紡ぐ。
「あともう一つは───」
剣城くんは、ゆっくり私の方へと振り向いて。
「『私を思い出して』」
目を細めて、切なそうな、苦しそうな表情で微笑んだ。
その瞬間、湿気を帯びた生温い風が頬を撫でて、地面に生い茂る草木がゆらゆら不安定に揺れ動いた。


