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「梅雨もそろそろ終わりかけだな〜」
でもまだ湿気すごいよな、と剣城くんが小さく笑う。
河川敷を2人肩を並べて歩く帰り道。
川の水が夕日の色に染まり、それが反射して、キラキラ眩しく煌めいていた。
「わざわざ送ってくれなくていいのに」
「俺がただ好きな人と一緒にいたいだけだからいいんだよ」
「…っ」
"好きな人"
はっきりそう言われてぽっと顔を赤らめてしまう。
どうして、剣城くんは私を好きになってくれたのだろう。
顔もスタイルも平均的で、私の容姿は"平凡"という言葉が合っている。
見た目だけでなく、勉強やスポーツを何でも完璧にこなす剣城くんと比べて、私は何の取り柄もない女。
私に好意を抱くような要素なんてないというのに、剣城くんは一体どのような所に好感を持ってくれたのだろう。
「…剣城くん」
「んー?」
剣城くんは、視線を景色に向けたまま、ゆるい返事をする。
「…あのさ、剣城くんは何で──」
「あっ!盾石、見てあれ」
『何で私のこと好きなの?』
そう聞こうとしたら、剣城くんが声を被せてきて、草木が生い茂っている場所へと歩いていき、そのまましゃがみ込んだ。


