剣城くんは押し強い



「…もっかいつけていい?」

「はっ!?だめ!やめて!!」


剣城くんから逃げようとしたら、ガシッと彼の大きな手に両手首を掴まれ、身動きがとれなくなる。


「…っ、はなっ、離して…!!」

「…何で?」

「何でが何で!?」


今、私は剣城くんの膝の上に乗せられていて、腰と背中には彼の腕が回され、もう片方の手で私の両手首を縛っている状態だ。

おまけに体は密着していて、距離はほぼ0cmに近く、心拍数がものすごい勢いで上昇する。

きっと心臓の音は相手にバレているだろう。


やだ、もう恥ずかしすぎて無理。
心臓爆発しそう。


唇をぎゅっと噛みしめてそっぽを向くと───…。



「ゆーずちゃんっ」



不意に剣城くんが下の名前で呼んでくる。

しかも小さい頃に呼ばれていた名前で。


「…何ですか?」

「好き♡」

「!?」


甘ったるい声で囁かれ、思いきり上体を後ろに反らす。

次の瞬間、RPGゲームの戦闘用BGMが脳内に流れ出す。


剣城くんの押し強い攻撃が私の心臓目掛けて見事に的中した!▼

1HIT!と吹き出しが表示され、私はダメージを受けてしまう。