槍田くんの顔を頭に思い浮かべていると、
「あっ、そうだ柚奈」
「…ふえっ!?な、何…」
ももちゃんに話しかけられてハッと我に返る。
「そういや言うの忘れてたけど、柚奈この前『剣城が盾石にぞっこん』って話教えた人物知りたがってたよね」
「えっ、あぁ、うん。言ってたね……」
自分で聞いておきながら、以前の体育祭の件で例の噂を流した犯人を探っていたというのに、頭の中は剣城くんの笑顔でいっぱいで、すっかり忘れていた。
「だから何だって話だけど、剣城が柚奈にぞっこんっていう情報、盾石弟にポロッと口滑っちゃってさ」
「へっ…」
「そんで、盾石弟が噂を流した張本人」
「……」
ゆっくりと、柚希の方へ視線を移す。
目が合った柚希は、「イェーイ」とピースサインを向けて来た。
「……この野郎…っ!!!」
許すまじき行為をした者がまさかの身内で、しかも弟だったなんて…!!
「そーだ、ゆずな。今日弁当持ってくんの忘れたから昼飯代ちょーだい」
「帰れ!!!」
大声を上げた私は、500円玉を机に叩きつけた。


