剣城くんは押し強い



「あらあら。えーっと、ごめん剣城くん、盾石さん保健室に連れて行ってあげてくれる?」

「わかりました」


剣城くんは「行こ」と手を引いて歩き出す。

小走りで後を追いながら彼を呼んだ。


「…何で、わかったの?」


自分でも自覚がなかった。
まさか熱中症になっているとは思わないではないか。


「化粧してるからちょっとわかりづらいけど、午前の時と比べていつもより顔赤かったから…」







「───あと、好きな人のことはいつもよく見てるから、なんとなくわかる」




"好きな人"。


私のことだと分かって、息が詰まったかのように苦しくなった。


なんで……なんで、そんな恥ずかしげもなく言えるの。

いつもの押し強くて図々しい剣城くんはどこにいったの?

さっき首筋噛んできたくせに、ケロッとした態度だしさ。

本当、調子が狂う。
何なんだ、この男は───。