剣城くんは押し強い



『午後の部、最初に行います競技は、借り物競争です。出場される生徒は───…』


自分のクラスのテントに戻ってきたと同時に放送委員のアナウンスが流れる。


「次借り物競走か〜」

「誰が出るんだろね〜」


クラスメイトたちが口々に話している間に競技は既に始まっていて、ピストルが鳴り響き、第一走者がスタート地点から一斉に走り出した。


「『テニス部の人』いますか〜!?」

「『メガネ』誰か貸してくださーい!!」

「『腹筋シックスパックの人』挙手おなしゃーす!!」


1枚の紙を片手に観客席に声をかけていく生徒たち。

それから第二走者、第三走者と次々の出場者がスタートしていく。


「おっ、あれ剣城じゃん」

「柚奈〜彼ピ出てるよ〜」

「彼氏じゃない!」


いつの間にか『剣城は盾石にぞっこん』という噂が学校中に流れていて、その噂は勿論、クラスメイト全員把握済みだった。

ももちゃんにしか言ってなかったはずなのに、ももちゃんは首を横に振って『流してない』と否定していた。



『あっ、でも1人にだけ言ったわ』

『えっ、誰───』



結局、その時はタイミングが悪いことに予鈴が鳴って聞けず終いに。